最後に鍵を閉める人。
仕事納めだったので、会社の大掃除をしていた。ただ今年は与えられた指令のせいで掃除はほとんどしなかった。一日の大半をつぎこんで僕がしていたのは『配線をまとめる』作業。会社の中に縦横無尽というか乱雑極まりない状態で絡まって絡まって絡まりまくっていた配線を、解きほぐし、分別し、繋ぎ直し、まとめ、括っていた。
プログラミングの世界ではない、現実世界でのスパゲッティコード把握作業をこなすうちにふと気付く。あぁ、自分に足りなかったのはコレだったのかと。目の前に立ちふさがるグシャグシャに絡まった現実。見た瞬間に見切りをつけて諦めてしまいそうになるのをこらえ、端の方から少しずつ少しずつバラしていく。そうすると徐々に見えてくるゴール。基本ともいえるこの過程を見失いそうになっていた。今年の僕にはその根気が、意気が圧倒的に足りなかった。そう、今の自分には我慢が足りない。
コツコツとコードのまとめ作業をこなしていく。最初は終わることなどありえないかと思うほどの量だったコードは、徐々に、だが確実に整理されていく。そして業務時間の終了間際、ついに全ての工程が終了した。僕はやりきったのだ。
既に忘年会の予約時間が押し迫っている。あわただしく社内の戸締りが始まり、僕も出発の準備を始めた。社長の『全部終わったな。行くぞー。』という言葉と共に会社を出る。会社ドアの鍵を閉める。カードキーで二重ロック。僕が戸締りをした。この瞬間に、2008年度の業務が全て、つつがなく終了した。
無事に忘年会を終え、現地解散。他の社員に挨拶をすませて駅に向かう。さぁ仕事は終わった。忘年会も終わった。あと僕が行く先は一つだけ。会社に戻って『唯一掃除されてない』自分のデスクを片付けるのだ。
今の自分には、圧倒的に、我慢が、足りない。